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現代演劇暴論5「SDP=青年団」

そして三つ目の問題「そんなこと言わねーよ」です。
「そんなこと言わねーよ」は突き詰めると「そんなこと思わねーよ」です。

SDP、キミドリ、かせきさいだぁ、脱線3、TOKYO NO.1 SOUL SET、ナオヒロック&スズキスムース。
彼らが所属したリトル・バード・ネイションは現代口語を使ってラップしました。
彼はあえて韻のしばりを放棄しました。
踏むときは踏むがそれは義務ではないと考えたのです。
だからこそ何を歌うかどう歌うかが難しくなってきます。
平田オリザが提唱した「現代口語演劇」=「静かな演劇」。
彼は不自然な日本語を極力廃し、話し言葉を使って演劇を立ち上げました。
会話の無意味さや不毛さを背負いながら作品を立ち上げようとする挑戦はまさにSDPのそれと同じ。歌詞や戯曲から「カッコつけ」の言葉を取り除くことで恥ずかしさから脱却しようとしたのです。

ここで最も重要なことは彼らの功績は「よりリアルに近いラップ・演劇を作った」ということではないことです。
まず「リアル」という言葉は大変、危険です。なぜなら万人共通のリアルというものは存在しないからです。何をリアルと思うかはそれぞれの感覚によります。だから「オレが真のリアルだ」論争が巻き起こるのです。HIP HOPでは「リアル」とほぼ同義語に「ストリート」、「アンダーグランド」、「ハーコー」などの言葉があり、ますます厄介になってきます。本来ならリアルだけどアンダーグランドじゃない、とか、ハーコーだけどリアルじゃない、とかが存在してもいいはずなんですが、「リアルでアンダーグランドでハーコー」のどれかが抜けると「フェイク」の烙印を押されてしまいます。
演劇も同じです。「リアル」だから「いい演劇」、「リアル」すぎるから「悪い演劇」の発想を捨てるべきです。語るべきは「豊か」か、「豊かじゃないか」です。

だからもう一度、LBと現代口語演劇の功績を考えます。
それは言葉の段階から現代日本人の生理に合わせることによって、今まで描けなかったものを描けるようになったことです。つまり現代の言葉を使うことによって近代の言葉では描けなかった「現代の何か」を描くことができるようになったのです。

参考資料。
スチャダラパー「サマージャム'95」

“今日も暑ーい1日になりそうです”
ほら言ってる わっ超あおられる
夏っつうと こうモーローと
してるうち翻弄されちゃうよどーも
なっ もうカーッとこられると
こっちも負けるかって気になるの
解ってんのに炎天下に
全然意味なく 家出たりしてね
そんで出た瞬間に 汗がダーッ
太陽ピカーッ 頭フラーッ
夏本番 海か?山か?
プールか? いや まずは本屋
で帰りにソバ ザルかせいろだ
それが正論 んふっ 入んないから
いっつも食ってんだけども
これが夏となると又 格別なのよ
で ふっと 外見ると子供まっ黒
プール帰りの アイス食ってんの
食ってないねーアイス 行ってないねープール
行ったねープール
みんなで徹夜あけ レンタカーで
情なかったねー海パンダサダサで
あれは笑ったなー 行きたいなー又
こんな曲でも流しながら

夏を歌った曲です。
どこかにある街のどこかにある通りの夏の風景が浮かんできます。
その「通り」は決して「ストリート」などと呼ばれる場所ではありません。
つまり従来の言葉ではきっと「ストリート」や「アンダーグランド」や「サグ」な夏しか描けなかったということです。現代口語ラップによってはじめてこの「夏」は描けたのです。
今まで描けなかったものを描けるようになる。
これはリアルかどうかはわかりませんが「豊か」なのは間違いありません。

もう現代口語演劇の功績については言うまでもないでしょう。
近代の言葉によって作られた登場人物達の「思考」は私達の感覚と次第に距離ができました。だからセリフに「そんなこと思わねーよ」とか「思っても口に出さねーよ」とか心でツッコミを入れてしまうのです。
現代の思考や人間を描くためには現代の話し言葉によるセリフが必要だったのです。
ちなみに青年団がスチャダラパーならMC BOSEが平田オリザでしょうか。
するとさしずめ岩松了はTWIGYで、宮沢章夫はECDですね。
宮沢、ECD、両氏のオーバーグランドからアンダーグランドへの変遷まで考えると意味深いです。

普段話している言葉を使って作品を作るとぱっと見なんにもすごくないように見えます。
普通の言葉を使おうとしているのですから普通に見えて当たり前です。
だからこそ何を語るかが重要になってきます。
あくまで「現代口語」でしか描けないもの、そして近代的でない分「感覚的」に私達に迫ってくるものそんな何かを描く必要があります。
LBや静かな演劇の生存率の低さがその難しさを語っているようです。

では次回はあくまでHIP HOPの思想はそのままに進化をした「さんぴん以降」と、同様に近代劇を徐々に現代風に進化させた「小劇場演劇」について語りたいと思います。

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