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現代演劇暴論8「演劇様式のガジェット化」

完全に脱線します。
次にやろうと思っていた「現代演劇と現代本格ミステリ」を少し前倒しでやります。
というのもハイバイを観劇して思うところがあったため。メモ書き程度に。
演劇様式とミステリ様式のガジェット化について。
本格ミステリの様式として「館」や「密室」や「首無し死体」なんかがあったわけです。
しかしながら現代日本にそうそう「館」が建っているわけもなくこれはちょっと非現実的じゃないかと。
そんなこんなで松本清張の「社会派」の隆盛です。
その後、新本格と呼ばれる世代が「いややっぱり館も名探偵も密室も大事だよ」と言いだします。
新本格は様式の復権と同時にトリック至上主義でもありました。
だからあくまで彼らが言う「館」は本格ミステリの内部の仕掛け、様式、トリックの一部として存在していました。
が、メフィスト後期、というかファウスト、そもそもは麻耶雄嵩が発端の、更なる新世代が出てきます。
彼らは「ミステリのためのミステリ」という本格の大前提を意識的に無視しました。
つまり「本格ミステリ」の箱を使って中身は「別の何か」を書き始めたのです。
いわゆる「脱格ミステリ」。
彼らは「館」だけでなく「ミステリ」までもガジェットとして扱います。
そうなってくると「館」は一種の記号です。
その辺りがよくわかるのが清涼院流水「コズミック」と舞城王太郎「九十九十九」。
館のための館、密室のための密室、首切りのための首切り。
意味も動機もトリックからも解放された「本格の様式」が一体何を表現するのか。
空洞化した様式で何を表現することができるのか。
その扱い方は今までの本格ファンを激怒させるものかもしれません。
しかしそれはやはり一つの挑戦だと思えるのです。

というようなことを考えたキッカケは野鳩を見たときでした。
ほほをふくらませてむくれる「学芸会的演技」、
草を「お弁当の中にある緑の奴のデカイ版」で表現するあの感覚。
演劇様式をガジェット化して新しい何かを作ろうとしていると感じました。
またハイバイの「しわ」。
ぶっちゃけ「しわ」が出てくるハイバイの芝居は見れてません。
が、写真とかチラシで見たので色々考えてみました。
つまりかつて若者が老人を演じる時に無自覚に書いていた「しわ」。
意識的になった現代演劇人は「老人に老人を演じさせる」とか「見た目はいじらず老人に見せる」とか
「老人の出てこない話にする」という至極、真っ当な方法でその様式を捨てたわけです。
だってよくよく考えると「顔にペンで書いたしわがあるって変」だからです。
それがかつての「館」にダブるのです。
日本に西洋館がボコボコあるのって変、と根本は一緒です。
ハイバイのあの執拗な「しわ」の写真を見ると、
名探偵が腐るほどでてきてなおかつ全員にそれぞれ特殊推理を持たせた「JDC」や、
何百人もの連続殺人事件が起こる増築に増築を重ね超巨大化した「蒼鴉城」を思い出すのです。
1200人の密室首切り殺人を通して「密室」、「首切り」そのものの意味を考える。
顔中にしわを書いて若者が老人を演じることで、「演技」や「しわ」について考える。
「密室」=「しわ」の先に何があるのかを探る。
というわけで世界は違えどやってることは一緒なのかなと思ったりしてるわけです。

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コメント

ブログ読んでます。初投稿です、青年団演出部のよこたたかおです。
演劇のガジェット、学芸的演技などなど、興味深いですね。。

いやはや、偉そうなことは何もいえないのですが、ハイバイさんとかサンプルさんとか、はたまたシベリア少女鉄道とか、「演劇っぽさ」の復権が、何かキーワードを持っているような気がしますー。

今後も、柴さんの作品とか、見てみたいっすー。そのときは是非、メールくらさい!

投稿: よこたたかお | 2007/06/04 01:16

適当に書いているだけなので読み流してください。
まぁ形骸化した小道具を意識的に使って新しい価値を見いだすってことでしょうか。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: 48 | 2007/06/04 02:08

今後も、ぜひぜひ観察してますー笑

投稿: よこたたかお | 2007/06/05 02:06

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