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現代演劇暴論9「RIP SLYME=三谷幸喜」

巧みなバランス感覚と高度なテクニックで最も大衆に支持された後期FGとウェルメイドについて。
FGクルーとはRhymester、EAST END、Mellow Yellowらが立ち上げたヒップホップクルーです。
後期FGとはKreva、MCU、Little(Kick the can crew)、RIP SLYMEを指します。
セールスのみで見ればヒップホップ勢の中で最も成功しているクルーです。
なおかつ、ここが一番重要ですが、リアル、ハーコー志向のヒップホップ勢にもその実力を認められている。
大衆に売れるとすぐにセルアウトの烙印を押されてしまうヒップホップ界で、ある種の奇跡的存在とも言えます。
彼らの特徴を一言で言えば「洗練」です。

LBほど現代口語ではありません。普段の言葉使いからはやはり少し離れています。
ZEEBRA達ほどハーコー志向でもありません。もう少し口語に近く、なじみのある言葉を使っています。
LBほどだらしなくはなく、ハーコーほど気取らない「洗練」された歌詞とトラック。
それが後期FGクルーです。

参考資料。
RIP SLYME「I・N・G」

KREVA「音色」

RIP SLYMEの方が洗練度が上で、KICK勢のほうが歌謡曲度が高いですね。
ちなみにRIP SLYMEはSDPとも競演しています。
最高レベルの「洗練」は現代口語と見分けがつかなくなるのです。
後期FGではありませんがこの流れにHOME MADE家族なんかがいたりします。より歌謡曲度が高まってますが。

で、これを現代演劇で考えるとウェルメイドの流れに当てはまるわけです。
ウェルメイドとは具体的に言うと、三谷幸喜、永井愛、土田英夫、マキノノゾミ等です、
最近だと赤堀雅秋、青木豪、蓬莱竜太なんかがいます。
つまり近代演劇を極限まで「洗練」させることで現代にも通用する演劇を創造した人達です。
「洗練」がミソです。完全に現代の感覚で「創造」すると現代口語演劇になってしまいますから。
あくまで近代演劇=翻訳劇のセリフやプロットが根底に生きているわけです。
そんなこと言わね、そんな言い方しね、そんなこと思わね(しない)を洗練されたセリフ、プロット、
展開、キャラクター作りで感じさせないようにする。それがウェルメイドです。
その美しさに、冷静に考えれば変なことも(大声を出す、デカイ身振り)も気にならなくなる。
またこっちも「洗練」の度合いが最高レベルに達すると現代口語とほぼ見分けがつかなくなります。

ジャパニーズヒップホップと現代演劇を広く一般に波及させたのは彼らです。
その功績の価値ははかり知れません。

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